ネクストイレブン2007-09-04 00:14:12

その後無事日本に帰国し、いつも通りの労働生活に復帰。

久しぶりのバングラは、やはり湿度が高く、雨が多く、人も多く、リキシャも多かった。相変わらず人々は暑苦しくも親切だった。そして国内は洪水で国土の半分が水に浸かり、テレビをつければ、緊急援助の物資を待つ人々の行列ばかりが繰り返し流れる。相変わらず何も変わっていないような気もするが、短い滞在中も、好調な経済の一端を感じさせるところはあった。

まず、ダッカ市内に外資系高級ホテルが次々にオープン。ラジソンにWestin。噂のWestinはソフトオープン中のところに、お茶をしに行ったが、中に入ればダッカにいるとは思えない雰囲気とサービスぶり。もともとSheratonもあるのだから、観光客が殆どいない国の割には随分な充実である。

それから、車が増えた。しかもかなり綺麗な車が増えたと思う。(という話をしたらば、昨今の汚職追放運動の結果、高級車は消えた、と言われたけれども。)ダッカ市内の交通渋滞はどう見ても悪化しているので、何らか手を打たないと悲惨な事態を招くのではないか、との印象。急速にすすむ都市化。

韓国資本がどんどん入ってきている。ダッカで滞在したホテルも韓国人が多数宿泊。チッタゴンに行けば、レストランには韓国料理メニューが沢山、滞在したホテルにも韓国人。日本はインドでも出遅れてるけど、バングラでも同様に出遅れた感あり。

好調な経済成長をつづける最貧国、バングラデシュ。BRICsにつづく、「ネクストイレブン」に数えられるだけの可能性があるのか、無いのか。韓国やベトナムとバングラデシュが同じに扱われる「ネクストイレブン」ってのはある種眉唾ものではあるが、かの有名なゴールドマンサックスによる市場評価なのだから、まあ、期待できないこともない、ということでしょう。

さておき、今年は夏山に行けなかった分、秋は山を満喫したい!というわけで、体力を回復するべく、本日、とりあえず、走った。当たり前だけど汗をかく。それにやっぱり疲れるな。あ〜、めんどくさい!

というわけで、我ながら、ジョギングを続けられるかどうか全く自信がない、月曜日の夜である...........。

踏んだり蹴ったり2007-08-24 18:55:37

踏んだり、とは、デング熱にかかったこと。
蹴ったり、とは、外出禁止令につかまってしまったこと。

という訳で、本当であれば今頃日本でいつもの労働生活であったところが、出張先のバングラデシュから脱出できていないのである。バングラデシュ到着後6日目にチッタゴンで発熱。デング熱の潜伏期間は3日から3ヶ月とも言われるので、超スピード発症だった今回、その後5日連続して点滴を入れるという事態になり、熱が引いて今日で3日目。

点滴5日目には、学生による反暫定政権活動激化により、国内6都市で無期限外出禁止令。まだ終わってない点滴を外してもらってホテルに帰る。以来、ホテルに缶づめ本日で3日目。

そういえば、バングラって非常事態宣言が出てるんだった。すっかり忘れておりましたよ。

それにしても、今回は一体自分は何しに来たんだ、と反省ひとしきり。2年振りのバングラデシュで、人生初の点滴を打ちながら、仕事の基本を肝に銘じる:健康第一!!

見所がないけど見られ所が多い国2007-08-08 22:45:57

2日ほど前の、バングラデシュに住んでいたことのある日本人との会話。
「ダッカ(主都)ってほんとに見所がないですよねー。」
「たしかに、見所はないけど、見られどころは沢山ありますよねー。」
(爆笑)

バングラに行ったことのある人なら、わかる話。
自分と一緒に動く人垣。遠慮ない熱い視線。視界から消えることのない、絶え間無い人々とリキシャの波。波。波。

明後日から2年ぶりのダッカ、チッタゴン。どのくらい変わっているのやら。

が、それにしても、今年の南アジアの洪水はひどい。既に3千万人近くが被災している。(なのに、日本のメディアでは殆ど報道が無い、という驚き。)

選挙2007-08-05 11:57:56

トンサとワンデュポダンの間の町で発見
先の参院選の結果は、バンコクから成田に飛ぶ飛行機の中で知った。投票日がブータン旅行中になる今回の選挙、投票日の2週間前、はじめての期日前投票で済ませていた。

日本では話題にならないが、ブータンは2008年に歴史上初めての総選挙を予定している。君主制から立憲君主をめざそうという路線は、国民の中から生まれたのではなく、前国王が打ち出したもの。ブータンの国王は賢王として知られるが、数年前には国王の権限を制限する法案を自ら提案、国民から抵抗を受けながらも説得して承認させたという人である。(ちょっと西にある某国とはえらい違い!)

今回旅行中、ブータンの人々の国王に対する信頼と尊敬をいうのをつくづく思い知らされた。タイも国王への敬意が篤く、国中にLong live the kingとあって驚くが、ブータンでは、人々が口を揃えて「私たちたこんな素晴らしい国王がいて、幸せである。選挙なんか本当はしなくて良い。Politicsにより汚職が蔓延し、国が悪くなるのは嫌だ。」と言う。

民主主義の形はそれぞれの国で、その国の人々が望む形であるべきで、何も国会があり、選挙があり、政治家がいて、ということでなくても良いとは思う。特に、教育の浸透や、いわゆるCivic Educationが不十分な国であった場合、政治システムの導入そのものが、汚職や不安定な政治情勢の原因となる面もあるだろう。(と、またしても西の某国が頭に浮かぶが。)優秀な指導者がいる場合、そのリーダーシップの元に国づくりを進めて行くというのもひとつのあり方だと思う。

が、ともかく、ブータンは来年の選挙に向けて、着々と準備を進めている。もう2度も模擬選挙をやっており、写真は土砂崩れをダイナマイトで爆破している間待っていた町で発見した模擬選挙の時に使われたと見られる模擬ビラ。はにかんだ若者が拳を挙げたところに、マニフェストなどと書いてあるのが微笑ましい。このビラの横にはカラー刷りで選挙や選挙制度を説明するポスターもあり。また旅行前には有権者教育用のビデオを見る機会があったが、なんだかまじめに頑張っていて素晴らしいのだ。

くどいようだが、これまた西の某国とは大違い。西の某国(ってネパールです)は、当初6月に予定していた制憲議会選挙が流れて、11月に延期。ここ1年ぐらい仕事の関係でネパールの選挙に向けた動きを見ているが、もどかしいほど、色々なことが決まらない、進まない。一つには、ネパールの政治家があまりに利己的であるというのが原因だと思うが、ここはネパールの歴史的転換期、どうにか頑張ってもらいたいものである。いい加減、「ブータンの反面教師国」の汚名を返上して頂きたいものだ、と、過去に3年ネパールに住み、多少の里心を持つ者としては思うのだ。

南アジアでは、近くパキスタンも、そして来年末までにはバングラデシュでも選挙が予定されている。インドに牽引されて経済成長も堅調な南アジアの国々。政治的環境も良い方向に向かって動いて行くことを願う。

自然の中に生きる2007-08-01 20:20:22

雨の緑の森を行く
学生の時に、東洋哲学の先生が、西洋においては自然とは「克服」するものであり、東洋においては「共生」するものである、と言われた。

高名な解剖学者に養老孟司という人がいる。数年前にはこの人の「バカの壁」という本が大ベストセラーになったが、私はこの本を数ヶ月前に初めて読み、その後数冊同氏の著作を読んだところで、私はこの人の「唯脳論」にある種衝撃を受けた訳です。いわく、すべての人工物の仕組みは脳の仕組みを投影したものである。人は己の意のままにならぬ自然から開放されるために人工物で世界を覆おうとする。そのようにしてできた世界が脳化社会。すなわち、人工空間の成立、仮想空間の成立、自然の排除。

考えてみたら、私が日常いる世界は、自分や他人の脳がコントロールしない世界であり得ないということ。人が作った建造物や構造の中から出る事はなく、すべて人工的に理解ができる範疇で日々を暮らしている。

山に登るということは、この「脳化社会」からほんの少し、逸脱するボーダーラインを彷徨うこと。山で感じる不安や恐怖は、常に自分のコントロールが効かない部分に対してであり、簡単に言えば、雪や風や霧。それでも技術やギアでこれを「克服」しようとする訳だ。

で、ブータンで感じたこと。それは、ブータンは「脳化社会」からほど遠く(もちろんそのような側面が全く無い訳では無いけれど)、自然を排除しコントロールするのではなく、自然を受入れ、共存する世界であるということ。自然は畏れるものであり、かつ自分が含まれる世界。正しく東洋の自然との「共生」が、ここにはある、と感じた。それ故の、「業」であり、「祈り」の世界であろう。

偶然にも、養老氏はブータンを理想の楽園と考えているそうである。なんでも、趣味の昆虫採集の楽園だからとか。

ブータン滞在中案内人をしてくれたブータン人のT氏が、日本語で「チョウチョ」というので、何で知ってるの?と問うたら、Butterfly collectorの日本人のリエゾンをしたことがあるそうで、Mr. Yoroか、と聞いたらこれはさすがに違った。そしてそのButterfly Collectorの日本人は、沢山のチョウチョをブータンから持ち出して、今ではブータンに入国できないそうである。

GNH, Gross National Happiness2007-07-15 21:31:45

来週からブータンに行ってくるので、ブータンに関する本を読んでいる。

GNH, Gross National Happiness, 日本語で言えば「国民総幸福」というのは、1976年に前国王が打ち出した、有名な考え方だ。

"Gross National Happiness is more imprtant than Gross National Product."

この話自体は有名であるし、新聞やら様々な文献に取り上げられているので今更特段どうとも思わないのだけれど、これを数式で表したものを見た時にちょっと衝撃を受けてしまった。

幸せ = 財 / 欲望

さすが仏教国!と感心すると同時に、妙に納得もしてしまった。

ブータンは、「財」を伸ばすと同時に、分母である「欲望」を小さくするために、情報を制限したり、伝統的な価値観の浸透を図る政治をしているとも言える。

アメリカでの学生生活の同級生に、ブータン人がいた。彼は結構なお洒落で、よくよく見ると結構なブランドものなどを着ているので、ブータン人なのに、お金持ちだなあ、などと思っていた。その彼も、経済学の授業のグループワークで、このGNHをプレゼンテーションのネタに使い、プレゼンの時にはグループの皆で、ブータンの民族衣装、「ゴ」を着ていたのが印象的だった。卒業した後の今年1月、期せずしてこのブータン人にバンコクで再会する機会があった。彼は実はブータンのお姫様(第一皇女)にお婿入りしている。バンコクのサービスアパートメントのレストランで会った彼は、食事の間中お姫様に大変な気配りをしていて、見ていて痛ましいほどであった。(が、本人は全然気にしてないらしい。)

1年に何度もバンコクに来るというお姫様に、バンコクで「何してるの?」と聞くと、「スキンケアのためのトリートメントと、ショッピング。」との答え。話によると、毎日毎日、お買い物が大変らしい。後から、ブータンにいる知り合いに、王族の乗った飛行機(国営のDruk Air)が空港に着くと、王室マークの荷物が山積みになると聞いた。

王族がこんな暮らしをしているのを、一般のブータン人は知っているのだろうか。

ブータンは2008年に初めての民主選挙を予定している。既に2回も練習の選挙が実施され、選挙に行こうキャンペーンも繰り広げられている。ブータンで作成された有識者教育のビデオを見たが、国際社会の支援なくとも、着々と準備を進める勤勉さは、予定された選挙も延期となり、全てが予定通りいかない隣国のネパールと比べたら、信じられないほどの優等生ぶりである。

が、しかし。ブータンの国民は、何かを選ぶための情報をどこまで持っているのだろうか。

ともあれ、王族の一人当たりGNHはもしかして、国民のそれよりも低いのかもしれない。なにせ、分子も大きいだろうが、分母も大きいであろうから。と言ったら、意地悪だろうか。